冷凍ギョーザ事件の経過

冷凍ギョーザ事件の経過

事件発生の状況

本件は平成20年1月30日新聞で報道されました。
最終的に確認された有機リン中毒の被害者は千葉県市川市と兵庫県高砂市の家族で合計10名でした。
幸いにして死亡者は出ませんでしたが一人はかなりの重症だったようです。
農薬メタミドホス混入の濃度が異常に高く、日本では当初より農作物の栽培時の農薬による汚染が原因ではなく、包装後の商品に意図的に毒物が注入されたものと考えられていました。

原因究明の経過

食の安全コラム「冷凍ギョーザ事件の経過」しかし中国側の主張は輸入後に日本国内で毒物が混入されたとして中国側には責任はないとのことでした。両国はお互いに混入の原因は相手国にありとしてこう着状態が2年以上続きました。
一方、半年ほど前、事故の発生した天洋食品(写真)の残った製品を中国の国内で食べたところ日本と同じ中毒症状が起きたとのニュースがありました。

一転、犯人逮捕の発表

今年の3月27日の新聞で、突然中国産冷凍ギョーザ事件の犯人が検挙とされたとの報道がされました。
迷宮入りも予想された中で、なぜ今なのか疑問は残るもののようやく一段落の思いです。
その後市川で回収された包装材料に注射針の穴が見つかるという日本側の失態もありましたが、これで供述と合致する事がわかり、中国で容疑者の起訴が行なわれました。

再発防止の対策は

本事件を契機として、食品業界では食品防御(フード・ディフェンス)の意識が高まりました。
今回の事件は汚染の程度から見て、当初より意図的に食品に毒物を混入したものと考えられていました。
しかしその証拠がないため原因追及の決め手がないまま2年以上が経過してしまいました。
この種の事件は輸入時に抜き取り検査でチェックすることは不可能です。
対策としては製造工場の管理が確実に行なわれていることが必要です。
この対策を総称してフード・ディフェンス(食品防御)と云います。
具体的には

・ 工場の管理体制が充分に出来ているか
・ 従業員の行動の確認や異常行動のチェックがされているか
・ 部外者や荷物の搬出入や保管などの管理が確実に行なわれているか
・ 施設の管理や原料・製品の監視が確実に行なわれているか

等々が挙げられます。

これらの対策は規則を作るだけでは効果がありません。
今食品業界で進められていて効果が期待できる方法として作業場や倉庫に監視カメラを設置して死角のない監視を常時行なう方法が導入されつつあります。
監視というといやな気分もしますが、事故発生の場合お互いに不信感を持つより、原因がはっきりすることで、仕事が安心して出来ると従業員からも歓迎されているようです。
 
 

食の安全コラム 記事一覧

 

先日、中国産冷凍ギョーザ事件の犯人が検挙されたとの新聞記事がありました。予定を変更して、食品安全の面から本事件の経過を振りかえって見ましょう。

コラム執筆者の自己紹介

食の安全コラム - 大谷丕古磨大谷丕古磨(オオタニヒコマ)が担当しています。
勿論、小金井市の住民で、現在小金井市の食育推進会議の委員(公募)です。
またボランティアですが、この食育ホームページの編集委員のメンバーでもあります。
私は食品会社に40年ほど在職し、現在は食品関連の技術士として行政当局や食品企業のお手伝いをしています。
特に食品の安全問題に関与して、講演や著作などの活動もしています。
食品安全委員会が発足して以来、5年間食品安全モニターを勤めたり、技術者の安全セミナーを主宰したりして、常に最新の食品安全の情報を把握するよう日々勉強しています。