初夏の手作り保存食

初夏の手作り保存食

6月は梅雨の季節。 梅の実が熟す頃ですが、6月から7月にかけ、梅・らっきょう・新しょうが・プラムとこの時季ならではの旬の食材が保存食として楽しまれてきました。
特に梅干は昔から健康食品として日本の食生活にはなくてはならないものです。 梅干し用の梅が6月中旬ごろから店頭に並びますが、梅干の生産地、和歌山県(紀州)の南高梅で作る梅干しはふっくらと美味しい梅干しができあがります。 そんな手作りの保存食、梅干し作りにチャレンジしてみませんか?
また6月上旬ごろ店頭で売られる青梅で簡単に作れる梅ジュース(梅シロップ)は、子どもも飲め、疲労回復、夏バテの予防に夏の飲み物としてお勧めです。

梅干しの歴史

梅干しは中国から渡来しました。
奈良朝時代に、はじめは梅の実を燻製にした「鳥梅(うばい)」として中国から渡来し、熱さまし、咳止め、吐き止めなどの薬として用いられていました。 中国から渡来した当時はまだ珍しく、美しい梅の花が観賞用として人気でした。
平安時代になると梅の花は観賞用から香りを楽しむものと変わっていき、鎌倉、室町時代には茶菓子として梅干しが供され、しだいに武家の食膳にも梅干しが添えられるようになりました。 唾液を出させ、食欲を進めるためのものと考えられていたようです。
戦国時代になると梅干しは薬として貴重なものとなり、倒れたときや元気を失ったときのために武士は食糧袋に「梅干丸」を携帯していました。 生水を飲んだときの殺菌用や傷口の消毒や出血の際の薬にも使われたようです。
江戸後期になると梅干しは一般庶民の常備食品として食卓にのぼるようになりました。 大晦日や節分の夜、梅干しに熱いお茶を注いで飲む「福茶」という習慣ができたり、しその葉を使って梅干しを赤く色づけするのが一般に広がりました。 しそ梅干しが普及し、古漬けの梅干しが「長寿の薬」として尊ばれるようになったのはこの頃で、特に古い年数の梅干しは旧家の証拠であり、たいへん貴重なものとされたようです。
明治時代になってからも梅干しは身近な保健薬であると同時に健康食品でした。 病気に対する薬効は大きなものがあり、コレラや赤痢の伝染病が大流行した時も薬として使われました。 日露戦争が始まると軍需用として梅干しの需要が伸び、白いご飯の真ん中に梅干しを埋めた「日の丸弁当」が生まれました。

現在では梅干しの効能も科学的に証明され、身近な健康食品として人々に愛されています。

梅干しの効用

「梅ひと粒の難のがれ」といわれる梅干しには、食欲増進や疲労回復、整腸作用の効果があるとされています。 また「梅干しには命を守る7つの徳がある」ともいわれ、たくさんの効用があります。

*抗菌・防腐・殺菌・解毒作用

梅干しは「3毒を断つ」といわれますが、梅干しの殺菌作用、 解毒作用、抗菌作用のことをいったもので、抗菌の効能があるため弁当やおむすびに梅干しが使われます。

*梅はアルカリ性食品の王様

梅にはカリウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、鉄分、カルシウムなどのミネラルが多く含まれています。 酸っぱくて酸性食品だと思われそうですが、強力なアルカリ性食品、アルカリ性食品の王様なのです。

*酸性の中和

私たちの体は弱アルカリ性が保たれていると健康で、酸性に傾くとめまい、肩こり、頭痛、口臭、疲れがたまり病気になりやすくなります。 アルカリ性食品の梅干は、血液を弱アルカリ性にして酸性の体を中和する効果があります。

*疲労回復と老化防止

乳酸が体内にたまると細胞や血管が硬化し、肩こりや老化を早める原因になります。 梅に多く含まれるクエン酸は、血液を浄化、サラサラにして血行をよくし、体全体の新陳代謝を促し疲労回復と老化防止に役立ちます。
また、梅に含まれるクエン酸がカルシウムと結びつくと、カルシウムの吸収率がよくなるため、骨の主要な成分であるカルシウムが減少して、腰痛や骨折を起こす骨粗しょう症などの予防にも役立ちます。

*生活習慣病の予防

梅干に含まれるフラボノイドなどの抗酸化物質が老化やがんの要因になる活性酸素を減らす働きがあります。 また、インスリンの働きを高めるため、血糖値が下がり糖尿病の予防に、血液中のコレステロールなどが血管壁に付着するのを防ぎ、動脈硬化や血圧の上昇も防ぎ高脂血症の予防にもなります。

*その他

他にもクエン酸の酸味が唾液の分泌を促し、消化吸収を良くする整腸作用や梅干をつぶし、おでこにはりつけることで熱を下げる民間療法もあります。